ドラマ『きのう何食べた?』の骨格を支えるのは、几帳面な弁護士・筧史朗(シロさん)と、人懐っこく情に厚い美容師・矢吹賢二(ケンジ)の2人が織り成す絶妙な相関関係です。キャスティング発表当初、実写化に懐疑的だった原作ファンの懸念を一瞬で払拭したのが、主演2人の徹底した役作りでした。
「西島秀俊 筧史朗役」のキャスティングは、端正な佇まいと家計管理にストイックな内面、そして内に秘めた葛藤を抱えるシロさんのイメージに完璧に合致しました。自炊シーンで見せる無駄のない包丁さばきや、スーパー「中村屋」での値引きシールへの執着など、日常のディテールへのこだわりがキャラクターに血を通わせています。
一方、「内野聖陽 矢吹賢二役」へのアプローチはまさに圧巻の一言でした。数々の重厚な舞台や大河ドラマで骨太な男性像を演じてきた内野が、内股の歩き方、指先の繊細な仕草、そしてシロさんを見つめる愛おしさに満ちた眼差しを体現しました。当時の特番インタビューにおいて内野は「ケンジの持つ乙女心や繊細さを嘘偽りなく愛おしく演じたかった」と述懐しており、西島が現場で素で吹き出してしまうほどのリアクションを生み出していたことが報じられています。
2人の周囲を取り巻く人々も極めて個性的です。スーパーの買い物仲間としてシロさんの良き理解者となる富永佳代子役の田中美佐子、シロさんが勤める「上町法律事務所」の所長・上町美江役の高泉淳子や若先生役のチャンカワイ、そしてケンジが勤務する美容室「フォーム」の店長・三宅祐役のマキタスポーツなど、バイプレイヤーたちの自然体かつ温かみのある演技が、東京下町の生活感を濃密に描き出しています。