国家試験の合否を左右する第一の指標が合格率です。厚生労働省および公益財団法人社会福祉振興・試験センターの公式発表資料を遡ると、精神保健福祉士国家試験の合格率は長年にわたり62%前後で安定推移していました。ところが、近年の試験では急激な上昇を見せ、直近の第28回国家試験では78.2%という過去屈指の高水準を記録しています。
この急変動の背景には、精神保健福祉士試験特有の「合格基準の設定方式」が存在します。本試験は、あらかじめ「上位何%を合格させる」という相対評価(競争試験)ではなく、一定の基準を満たした者を全員合格とする絶対評価に近い基準を採用しています。公式に定められた合格基準は、原則として「総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正した点数以上であること」です。
問題が平易な年度には平均点が跳ね上がり、基準点も引き上げられますが、それでも多くの受験生がボーダーを超えるため、結果として合格率が70%後半にまで跳ね上がります。逆に、法改正直後や応用事例問題が難化した年度には基準点が引き下げられるものの、取りこぼしが増えて合格率が60%台前半へと押し下げられます。つまり、合格率の数字そのものは受験生の学力変化を表しているのではなく、「作問の難易度と補正のブレ」がダイレクトに数値へ反映された結果にすぎません。