制度改革が急速に進む中、ネット上の誤った情報や古い知識によって不利益を被る加入者が急増しています。特に注意すべき典型的な誤解を解き明かします。
最大の混乱はマイナ保険証移行と資格確認書対応をめぐる現場の認識ギャップです。従来のプラスチック製健康保険証の発行が終了した後の現在、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録していない被保険者や、カードの電子証明書の有効期限が切れた被保険者には、申請なしで職場の事業主経由(または協会けんぽから直接)「資格確認書」が無償交付されます。しかし、「マイナ保険証を持っていないと医療機関で10割全額負担になる」という極端なデマを信じ込み、不要な焦りから窓口へ駆け込む高齢者が後を絶ちません。資格確認書を医療機関の窓口に提示すれば、従前とまったく同じ3割(または1〜2割)の窓口負担で診療を受けられます。
もう一つの深刻な盲点が、「任意継続の初回保険料納付期日」です。退職後に任意継続被保険者となった場合、初回納付期日(通常は納付書の指定期日)までに1日でも支払いが遅れると、理由の如何を問わず即座に資格を喪失し、二度と任意継続に戻ることはできません。「うっかり銀行へ行くのを忘れていた」「給与引き落としの感覚でいた」という弁明は一切通用せず、遡って国民健康保険への強制切り替えとなります。国民健康保険料の方が高額だった場合、年間で十数万円以上の経済的損失を被る重大事故につながります。
【プロの結論】任意継続を選ぶべき人・慎重になるべき人の判断基準
退職というライフイベントにおいて、健康保険の選択は家計防衛の試金石となります。社会保障制度の現場を取材し続けてきた専門記者の視点から、後悔しない明確な線引きを提示します。
【任意継続を即座に選ぶべき人の条件】
第一に、「在職中の月収が比較的高く、扶養している配偶者や子供が複数いる人」です。国民健康保険には「扶養」という概念が存在せず、家族の人数分だけ均等割保険料が加算されます。しかし、協会けんぽの任意継続であれば、何人扶養家族がいても保険料は本人の標準報酬月額(上限枠あり)に基づく一定額のみで済みます。また、退職前1年間の給与水準が高く、翌年の国保料が上限(年額100万円超)に達する見込みの高い単身者も、任意継続の上限規定の恩恵を受けることができます。
【任意継続に慎重になるべき(国保や扶養を優先すべき)人の条件】
一方で、「家族の社会保険(配偶者や子供の健康保険)の扶養に入れる見込みがある人」は、自身で保険料を払う必要がゼロになるため、任意継続を選ぶべきではありません(年収要件等の審査あり)。また、「退職理由が会社都合(倒産・解雇・雇い止め等)であり、ハローワークで特定受給資格者や特定理由離職者と認定された人」は、国民健康保険料の所得割額を7割軽減する非自発的失業者減免措置が適用されます。この減免を受けた国保料は、任意継続の全額自己負担額を大幅に下回ることが多いため、即決で任意継続を申し込むと致命的な損をすることになります。