国内外のデザイナーやバイヤーを驚嘆させたのが、ブランドを象徴するシグネチャーカラー「オリイブルー」の特徴的な美しさです。ターコイズや群青、深海を思わせる複雑なマーブル模様は、塗料を吹き付けた一般的な塗装とは根本的に性質が異なります。
その最大の違いは、金属自体が持つ自然の酸化と腐食を引き出す「化学発色」である点です。高岡銅器の伝統技法では、米糠(ぬか)や大根おろし、米酢、酒粕、硫酸銅、硫化カリウムといった天然素材や薬品を絶妙な配合で銅の表面に作用させます。熱した銅板にこれらの素材を反応させると、金属の表面に数マイクロメートルという極めて薄い酸化皮膜や錆(緑青など)が自発的に生成されます。この光の屈折と鉱物反応の重なりこそが、人為的なインクでは決して再現できない生命感あふれる色彩を生み出す理由です。
折井着色所が開発したオリイブルー(tone blue)は、銅と真鍮の合金比率や加熱温度、湿度、職人の拭き上げの手加減によって、世界に二つとして同じ表情が生まれません。塗膜が存在しないため「塗装がペリペリと剥がれる」という劣化が存在せず、空気に触れ、人の手で触れられることで、10年、20年と時を経るごとに味わいを深めていく点が、本物志向の愛好家を惹きつけてやまない決定的な理由となっています。