「最近、呼んでも起き上がらずに寝てばかりいる」——これはシニア犬の飼い主から最も多く寄せられる相談の一つです。成犬時の平均睡眠時間は12〜14時間程度ですが、10歳を過ぎると16〜18時間を睡眠に費やすようになります。基礎代謝の低下や筋力の衰えに伴い、エネルギーを温存しようとする生理現象そのものは自然な老化の一環です。
しかし、臨床現場の獣医師が警鐘を鳴らすのは、10歳犬寝てばかり理由の中に「痛みをじっと耐えている状態」や「重篤な疾患による極度の倦怠感」が潜んでいるケースです。
代表的な病気のサインとして、まず疑うべきは変形性関節症(関節炎)です。犬は痛みを声に出して訴えません。立ち上がるときに前足に体重をかけづらそうにしている、フローリングで滑るのを極端に恐れる、階段や段差の前で立ち止まるといった仕草は、関節の慢性炎症による鈍痛を抱えている証拠です。これが進行すると、次第に10歳犬散歩行きたがらない状態へと直結していきます。
さらに見過ごされやすいのが、内科的疾患がもたらす活動性の低下です。
- 僧帽弁閉鎖不全症(心臓病):特に小型犬の10歳前後に好発。血液の逆流で全身に酸素が回らず、動くのがしんどいために横になる時間が増えます。寝起きや興奮時に「カッカッ」と喉に物が詰まったような乾いた咳をするのが特徴です。
- 甲状腺機能低下症:ホルモン分泌が減少し、無気力、寒がり、顕著な体重増加、脱毛が見られます。
- 慢性腎臓病・糖尿病:「水を飲む量が急激に増えた(多飲)」「尿の量が異常に増え、色が薄い(多尿)」という症状を伴う場合、代謝老廃物が体内に蓄積して生じる吐き気やだるさから、一日中ぐったりして眠り続ける傾向があります。
ただ眠っているのか、それとも苦痛に耐えて動けないのか。呼吸の速さ(安静時に1分間30回以下か)、食欲の有無、名前を呼んだときの視線の反応を観察し、少しでも違和感があれば「歳のせい」で片付けてはなりません。