阿夫利のブランドイメージを語る上で、2026年夏に表面化し、業界内外で大きな物議を醸した株式会社吉川醸造との商標権トラブルは看過できない事象です。この問題は、企業ブランディングと地域文化の衝突という現代的なテーマとして、多くのビジネスパーソンや法曹関係者の注目を集めました。
発端は、神奈川県伊勢原市の老舗酒蔵である吉川醸造(シマダグループ)が、大山(阿夫利山)の伏流水で仕込んだ日本酒の銘柄として「雨降(あふり)」を発売したことです。これに対し、ラーメンチェーンを運営する株式会社AFURI側が、「自社の登録商標『AFURI』『阿夫利』の権利を侵害している」として、吉川醸造に対して商品名の使用差し止めや容器の破棄、損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴しました。
吉川醸造側は「『あふり』は大山・阿夫利山という数千年前から存在する地域の歴史的呼称・文化遺産であり、一私企業が独占すべき名称ではない」と公式ウェブサイトで反論声明を発表。これがSNS上で拡散されると、ネット上では「地域で古くから愛されてきた地名を民間企業が囲い込むのは傲慢ではないか」「伝統ある酒蔵を法的に威圧しているように見える」といったAFURI社に対する激しい批判と不買運動の呼びかけが巻き起こり、ブランドイメージに大きな傷を残す結果となりました。
知的財産権の法理上、商標の希釈化(ダイリューション)を防ぐために権利行使を行うこと自体は企業の正当な防衛行動とも解釈されます。しかし、「地域共有のアイデンティティ」と「近代的な商標権」が衝突した際のパブリックリレーションズ(広報戦略)の失敗として、マーケティング史に残る教訓的な事例となりました。現在もこの経緯を知る古くからのファンの間では、同社の企業姿勢に対して複雑な感情を抱く層が一定数存在しています。