岡山県立美術館を訪れるべき最大の理由は、「岡山の地に根ざした美の系譜」が日本美術史の背骨と直結している事実を五感で体感できる点にあります。地方公立美術館の多くが巡回型の大型企画展に集客を依存するなか、同館は開館以来、郷土ゆかりの古美術から現代アートに至る膨大なコレクションの体系的保存と公開に情熱を注いできました。
とりわけ、室町時代に備中赤浜(現・総社市)で生まれた画聖・雪舟の水墨画や、美作国宮本村(現・美作市)が生んだ剣聖・宮本武蔵が遺した極めて鋭利な筆跡は、日本の水墨画史における頂点といっても過言ではありません。教科書や美術全集でしか見られない超一級の歴史的遺産が、まさにその空気を育んだ風土のただ中で展示されている重みは、他館では味わえない深い感動をもたらします。
さらに、同館が位置する「岡山カルチャーゾーン」は、岡山後楽園、岡山城、岡山市立オリエント美術館などが徒歩圏内に凝縮された文化特区です。歴史的景観の散策と第一級の美術鑑賞がシームレスにつながる導線設計こそ、アートファンが岡山を目的地に選ぶ決定打となっています。