ノーベル文学賞作家が描いたこの物語は、舞台を日本に移した翻案でも大きな脚光を浴びた。2016年にTBSテレビの金曜ドラマ枠で放送された『わたしを離さないで (2016年のテレビドラマ)』は、原作の持つ内省的なディストピアの空気を、息もつかせぬサスペンスと激情の人間劇へと見事に昇華させた。
原作小説がキャシーの静かな回想で淡々と綴られるのに対し、ドラマ版は登場人物たちの感情の爆発を容赦なく描いた。運命を呪い、生きることに執着し、時に激しく罵り合う。その生々しさは、日曜劇場などを手掛けるTBSならではのダイナミックな筆致だったと言える。
さらにドラマ版では、隔離された閉鎖空間「陽光学会」を取り巻く一般社会の偏見や、クローンを生み出した現代医療の闇がより直接的に描写された。原作の文学的な余白を、映像ならではの緊張感で埋め尽くした構成は、当時の視聴者の間で激しい賛否両論と熱狂を巻き起こした。