冷蔵庫の隅でペラペラにしなびてしまったレタスでも、諦めて廃棄する必要はありません。失われた細胞の張りを取り戻す物理現象として知られるのが「浸透圧を利用した水浸け」および「50度のお湯洗い」です。
野菜がパリッとしているのは、細胞膜の内側に水分が満ちて「膨圧(細胞壁を押し広げる内圧)」が保たれているからです。乾燥によって水分が抜けると、風船の空気が抜けたように細胞がしぼみ、葉全体がクタクタになります。これを冷水に15〜30分ほど浸すと、浸透圧の原理によって細胞膜を通って水分が急速に再流入し、細胞壁が再び突っ張ることで元のシャキシャキ感が蘇ります。
さらに即効性が高いのが、食品科学分野で確立された「50度洗い」の手法です。48℃〜52℃に調整したお湯にレタスの葉を2〜3分浸すと、熱ショック(ヒートショック)によって葉の表面にある気孔が瞬時に開き、短時間で大量の水分を吸い上げます。同時に、熱によって細胞表面のペクチンが一時的に安定化し、冷水で戻すよりもさらに歯ごたえが増すという化学的根拠があります。ただし、温度が55℃を超えると葉が煮えて組織が死滅し、逆に45℃以下では雑菌の繁殖域に入るため、料理用温度計を用いた厳密な温度管理が成否を分けます。