米経済誌『フォーブス』やブルームバーグの調査報道において、しばしば「世界で最も裕福な君主」として筆頭に挙げられるのがタイ国王です。その推定総資産は300億ドルから400億ドル超(日本円換算で約4兆5,000億〜6兆円以上)に達すると見積もられており、英国のチャールズ国王や中東の産油国モナークすら凌駕する規模を誇ります。なぜ東南アジアの一国であるタイの王室が、これほど突出した富を掌握しているのでしょうか。
莫大な財力の根幹にあるのが、歴史的に王室財産を管理してきた「王室財産管理局(CPB)」の存在と、ラーマ10世による法改正です。従前のタイ王室資産は「国家と王室の共有財産」に近い法的位置づけにあり、財務大臣が理事長を務める管理組織によって運用されていました。しかしラーマ10世は2017年から2018年にかけて関連法を改正し、CPBが保有していた巨額資産の名義をすべて国王個人名義へと一本化させました。
この資産ポートフォリオには、タイ国内の主要産業を牛耳る優良企業の巨大な株式が含まれています。国内最大手セメント複合企業「サイアム・セメント・グループ(SCG)」や、名門金融機関「サイアム商業銀行(SCB)」の筆頭株主であるだけでなく、首都バンコク中心部の広大なプライム不動産(数千エーカー規模の商業地・官公庁用地)を所有しています。都心の高級ショッピングモールやオフィスビルが支払う賃料収入が、恒常的かつ莫大に王室の金庫へと流れ込む構造が完成しているのです。