ビジュアル面での圧倒的な変貌に加え、ファンを唸らせたのが大沢たかお 王騎 笑い方の表現力です。原作の王騎を語る上で欠かせない「ンフ」「ココココ」という独特の奇声交じりの笑い声は、文字としては成立しても、実写の映画館でそのまま発音すれば失笑を買いかねない極めて危険な要素でした。
大沢は舞台挨拶やインタビューにおいて、この笑い声の構築について「何度も自宅の風呂場やスタジオで発声練習を重ね、どのキー(音高)であれば王騎の高貴さと不気味さが両立できるかを探り続けた」と振り返っています。
結果として生み出されたのは、腹の底から響くような低音と、相手の心理を軽やかに見透かすような艶やかな高音が同居した唯一無二の声色でした。主人公の信(山﨑賢人)や若き王・嬴政(吉沢亮)と対峙した際、言葉の端々に挟まれる「ンフ」という息遣いは、単なる癖ではなく、百戦錬磨の大将軍が持つ絶対的な余裕と知略を観客に瞬時に知らしめる装置として見事に機能したのです。