アバクロ銀座の閉店理由と現在|熱狂の裏側と再上陸の真相

アバクロ銀座の閉店理由と現在|熱狂の裏側と再上陸の真相

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社会現象を巻き起こした銀座旗艦店は、なぜ11年余りの営業を経て閉店に至ったのでしょうか。経済メディアの報道や業界関係者の証言、米本社のアニュアルレポートを分析すると、複合的な4つの決定打が浮き彫りになります。

第1の要因は、銀座の一等地における莫大な不動産コストと採算性の悪化です。地上11階建てという巨大なビルを一棟借りしていたため、月額の賃料負担は数千万円単位に達していました。オープン当初の過熱ブームが落ち着いた後は、売上に対して固定費が極めて重い構造へと変化し、末期には新型コロナウイルスの感染拡大に伴うインバウンド需要の完全消失が致命傷となりました。

第2に、「ジャパンプレミアム」と呼ばれた極端な内外価格差が挙げられます。日本展開当初、アバクロは本国アメリカの定価に対しておよそ1.5倍から2倍近い強気の価格設定を行っていました。当時、個人輸入や並行輸入サイトが普及するにつれて「アメリカで買えば半額近いのに、なぜ銀座で高く買わなければならないのか」という不満が消費者の間に広がり、割高感がブランド離れを加速させました。

第3の理由は、ブランドの根底にあった「排他主義(選民思想)」に対する社会的制裁です。当時のCEOであったマイク・ジェフリーズ氏が過去に放った「アバクロはスタイルが良く魅力的な若者のための服であり、そうでない人には着てほしくない」という趣旨の発言や、人種・体型に関する差別的な雇用慣行が世界中で激しい批判を浴びました。2010年代半ば以降、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)を求める時代の潮流と完全に逆行したことで、ブランドイメージは急速に失墜していきました。

第4に、グローバル規模での抜本的なリブランディングに伴う「旧世代店舗の清算」です。2014年末に旧経営陣が退任し、2017年に新CEOに就任したフラン・ホロウィッツ氏のもとで、ブランドは「暗闇・爆音・セクシー路線」を完全撤廃する方針を固めました。銀座店のようなバブルの遺産とも言えるメガストアは、新戦略のコンセプトと相容れなくなり、契約満了や事業見直しを機に順次閉鎖される運命にありました。

高橋 健太
著者

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。