ネット上のQ&AサイトやSNSで今なお頻繁に見られるのが、「『飛行艇』は2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の公式テーマソングだったのではないか?」という疑問です。結論から述べると、日本テレビ系の中継イメージソングは嵐の『BRAVE』であり、大会公式やCM関連ではB'zの『兵、走る』などが広く知られており、『飛行艇』がラグビーW杯の公式応援歌に指定された事実はありません。
それにもかかわらず、なぜこれほど強固な認識の混同が生じたのでしょうか。報道記録や当時のファンの動向を検証すると、三つの決定的な要因が浮かび上がります。第一に、2019年秋の日本中がラグビー日本代表の歴史的躍進に沸いた時期と、『飛行艇』が街中やTVから鳴り響いていた時期が完全に一致していた点です。第二に、「どんな夢を見に行こうか」「命揺らせ」という泥臭く強靭な歌詞と、身体をぶつけ合って前進するラグビー日本代表の武骨な勇姿が、大衆の脳内で完璧にシンクロした点です。
さらに第三の要因として、当時多くのスポーツニュース番組やファンが制作したハイライト映像のBGMとして『飛行艇』が非公式・公式を問わず多用された背景があります。公式のタイアップという枠組みを超越し、大衆が「この熱狂に最もふさわしい音楽」として自然発生的に選び取った結果が、この記憶のすり替えを生んだと言えます。事実無根の誤認でありながら、それ自体が楽曲の持つ凄まじい求心力を証明するエピソードとなっています。