歯根破折の診断を難しくしているのは、初期段階で典型的な虫歯のようなサインが出にくい点にあります。見逃しを防ぐためには、特有の自覚症状とメカニズムを正しく把握しておく必要があります。
最も典型的な歯根破折の痛みの特徴は、「普段は何ともないのに、硬いものを噛み締めた瞬間だけピキッと鋭い痛みが走る」「特定の歯だけ浮いたような違和感がある」という咬合痛です。神経がない歯であるため、冷水痛や温水痛は起こりません。
病状が進行すると、割れ目から侵入した細菌によって根の周囲に炎症が広がり、歯茎に白いニキビのようなおでき(フィステル/サイナストラクト)が出現します。ここから膿が排出され、特有の生臭い口臭を放つようになります。この状態を「歯周病の悪化」と自己判断して放置してしまう患者が非常に多いのが実情です。
さらに厄介なのが、歯根破折は初期のレントゲン写真に写らないケースが多々あるという事実です。通常の2次元パノラマレントゲンは、エックス線が破折線の隙間と完全に平行に入射しない限り、割れ目を黒い影として描出できません。確定診断には、ミクロン単位で立体断層を確認できる歯科用CT(CBCT)の撮影や、マイクロスコープによる歯周ポケット深部の直接観察が不可欠となります。