うな鐵の暖簾をくぐると、まず立ち上る炭火と秘伝ダレの香ばしさに五感を刺激されます。多くの鰻専門店が「蒲焼き」「うな重」を主軸に据える中、うな鐵が長年愛される決定的な理由は、1匹の鰻からわずかしか取れない希少部位を巧みな串打ちで提供する独自のスタイルにあります。
初めて訪れる人が直面するのが、短冊、くりから、肝焼き、きも、かぶと、ひれといった独特な品書きの壁です。注文で迷った際の鉄則は、看板串がバランスよく組み合わされた「一通り(串焼きセット)」を最初に頼むことです。職人が部位ごとに最適な焼き加減と味付け(タレ・塩)で順番に焼き上げてくれるため、素材本来の旨味を最も自然な流れで堪能できます。
中でも外せない名物が「くりから(倶利伽羅焼き)」です。鰻の身を細長く切り、串に螺旋状に巻き付けて香ばしく焼き上げたもので、不動明王が持つ倶利伽羅剣に竜が巻き付く姿に似ていることからその名が付けられました。皮目のパリッとした食感と、噛むほどに溢れ出すジューシーな脂の旨味は、うな重のふっくら感とは一線を画す鮮烈なインパクトを残します。
また、背びれや尾びれをニラやネギに巻き付けて焼き上げる「ひれ(ひれ巻き)」は、コラーゲンと濃厚な脂が凝縮された通好みの逸品です。ほろ苦いコクが酒を誘う「肝焼き」や、圧力鍋等で骨まで柔らかく煮た後に炭火で炙る「かぶと(頭)」など、部位ごとに全く異なる食感と風味を味わえる点こそ、大衆食としての鰻の奥深さを物語っています。