学校の定期試験や大学入試対策において、「扇の的」は古文読解の超頻出単元です。特に敬語の識別や助動詞の意味、主語の判定は合否を分ける重要ポイントとなります。ここでは最も重要なクライマックス部分の本文、現代語訳、および品詞分解を解説します。
扇の的 クライマックスの本文と現代語訳
【原文】
与一、目をふさいで、「南無八幡大菩薩、別しては我が国の神明、日光権現、宇都宮、那須の温泉大明神、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ。これを射損ずるものならば、弓を折り切り、自害して、人に二度面を向かふべからず。いま一度多く本国へ迎へんとおぼしめさば、この矢はづさせたまひそ。」と、心のうちに祈念して、目を見あけたれば、風も少し吹き弱り、扇も射よげによかったり。
【平家物語 扇の的 現代語訳】
与一は目を閉じて、「南無八幡大菩薩、とりわけ私の故郷の神々である日光権現、宇都宮大明神、那須の温泉大明神よ、どうかあの扇の真ん中を射させてくださいませ。もしこれを射損じるようなことがあれば、弓をへし折って自害し、二度と人に顔向けはいたしません。もう一度私を生きて故郷へ帰そうとお思いになるならば、この矢を外させなさるな。」と心の中で祈って目を開けると、風も少し吹き弱まり、扇も射やすそうに揺れていた。
テストで狙われる重要助動詞と品詞分解
試験で最も問われやすい助動詞の用法を厳選して整理します。
・「射させてたばせたまへ」:
「射(サ変動詞・未然形)」+「させ(使役の助動詞・連用形)」+「たばせ(敬愛の補助動詞「給わす」の連用形)」+「たまへ(尊敬の補助動詞「給ふ」の命令形)」。神仏に対する最高度の祈願表現。「私に射させてください」の意。
・「人に二度面を向かふべからず」:
「向かふ(四段動詞・終止形)」+「べから(可能・当然の助動詞「べし」の未然形)」+「ず(打消の助動詞・終止形)」。ここでは「二度と人前に顔を向けることができない(合わせてはならない)」という【不可能】または【強い意志・当然】を示します。
・「この矢はづさせたまひそ」:
「はづさ(使役動詞・未然形)」+「せたまひ(尊敬表現)」に、呼応の禁止副詞「な〜そ」の構造が組み合わさった形(「な」が省略された「〜そ」の禁止表現)。「外させなさるな(絶対に命中させてください)」という強い禁止・願望を表します。
主語特定を可能にする敬語の解説
古文において主語が省略された際、敬語のレベルを手がかりに人物を特定するのが鉄則です。
・「のたまふ」「仰せらる」:源義経から与一への命令に用いられる尊敬語。動作主は必ず「義経」です。
・「仕る」「罷り出づ」:与一が義経に対してへりくだる謙譲語。動作主は「与一」です。
・「候ふ」:義経に対する丁寧語(「〜でございます」)。会話文の聞き手は「義経」となります。
特に「扇も射よげによかったり」の「射よげに」は「射やすそうに」という状態を表す形容動詞の語幹であり、その後の「よかったり」は「よし(良い)」の連用形「よく」がウ音便化した「よう」+助動詞「たり(存続・完了)」である点も記述試験で頻出です。