もっとも多く寄せられる疑問が、培養液に使われる水耕栽培の液体肥料の危険性と、それに伴う「発がん性の噂」です。肥料と聞くと工業用薬品のような毒性をイメージする方もいますが、液体肥料の主成分は窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウムといった、植物の成長に不可欠な基本ミネラルです。
土耕栽培の場合、堆肥などの有機物を土中の微生物が分解し、無機イオンの形に変えてから根が吸収します。水耕栽培は、この「微生物が分解した後のミネラル状態」をあらかじめ水に溶かして直接与えているだけであり、取り込まれる成分そのものに本質的な違いはありません。
では、なぜ水耕栽培の硝酸態窒素の危険が取り沙汰されるのでしょうか。植物は窒素を「硝酸態窒素」という形で吸収しますが、日照不足などで光合成が不十分だと、消費されなかった硝酸態窒素が葉の中に高濃度で残留することがあります。これが体内で亜硝酸塩に変化し、アミン類と結合すると発がん性物質(ニトロソ化合物)を生成する可能性があると指摘されているためです。
しかし、農林水産省やEUの安全基準調査を見ても、徹底したLED照射と培養液管理を行っている近代的な植物工場では、収穫直前に光を強く当てる、あるいは肥料濃度を下げることで硝酸態窒素の残留濃度を極限まで低減させるコントロールが可能です。むしろ日照条件がコントロールできない露地栽培のほうが、天候不順時に硝酸態窒素を多く溜め込むケースすらあります。日常的な摂取量で発がんリスクを高めるという主張は、科学的根拠に乏しい俗説と言えます。