フライングスコッツマンのルーツは、四国・愛媛県松山市にあります。1988年に創業した自家焙煎珈琲店であり、店名はかつてロンドンとエディンバラ間を駆け抜けた英国の高名な蒸気機関車「フライング・スコッツマン号」に由来しています。重厚な木目調の内装と、職人が一杯ずつ丁寧に淹れるサイフォンコーヒーは、松山の地元民にとって上質なサードプレイスとして愛されてきました。
その地方の名店が東京・秋葉原への進出を果たしたのは2015年のことでした。当時、都内では原宿や表参道を中心にリコッタチーズ系やスフレ系のパンケーキブームが最高潮を迎えていました。しかし、フライングスコッツマンが打ち出したのは、流行りのフワフワ系とは一線を画す、昔ながらの喫茶店ホットケーキを極限まで進化させた厚さ約4センチ×2段の「手作り極厚ホットケーキ」でした。
専用のセルクル(型)を用い、弱火の銅板でじっくり蒸し焼きにすること片面約10分、合計20分以上。表面はサクッと香ばしく、中は蒸気をたっぷり含んでしっとり、ぎっしりとした密度の高い生地が完成します。フォークを入れた瞬間に立ち上る甘い湯気と、添えられたバターが溶け出すビジュアルは、秋葉原のカルチャーとも見事に共鳴しました。「コンテンツの鑑賞」に長けた秋葉原のユーザー層の間で、その完成度の高い佇まいがSNSで爆発的なバズを巻き起こしたのです。
さらに、秋葉原エリアでは希少だった本格的なサイフォンコーヒーの提供も差別化に寄与しました。豆の個性をダイレクトに引き出す高温抽出のサイフォンコーヒーは、濃厚な甘みを持つホットケーキの最高の後味を演出し、単なる映えスイーツにとどまらない骨太な喫茶体験を確立しました。