「自動で最適な帯域を選んでくれるなら夢のような機能ではないか」と思えるバンドステアリングですが、SNSやITコミュニティでは「バンドステアリングを有効にしたらゲームが落ちる」「通話がぶつぶつ切れる」といったクレームが後を絶ちません。当編集部がネットワークエンジニアへの取材やパケットキャプチャ検証を重ねた結果、バンドステアリングで途切れる理由には、電波技術特有の構造的な欠陥が存在することが判明しました。
通信が不安定化するメカニズムは、主に以下の3点に集約されます。
① 境界線上での「ピンポン現象(激しいハンドオーバー)」
ルーターから少し離れた部屋や廊下など、5GHz帯の電波が弱まり始めるギリギリのエリアに端末が存在する場合、ルーターは「5GHzが弱いから2.4GHzに移そう」と判断します。しかし、2.4GHzに移った瞬間に「電波強度が十分回復したから、より高速な5GHzへ戻そう」と再判定が下されることがあります。この判断が短時間のあいだに何度も繰り返されることで、端末が周波数帯の間を往復し続ける「ピンポン現象」が発生します。
② 切り替え時に生じる「0.5秒〜2秒の無通信時間」
周波数帯を切り替えるプロセスにおいて、Wi-Fi接続は一度切断され、新たな周波数で認証・再接続のシーケンスを実行します。Webサイトの閲覧やバッファを持つ動画視聴であれば気付きにくいわずかな時間ですが、ZoomやMicrosoft Teamsによるオンライン会議、リアルタイム対戦型のオンラインゲームでは、この「約1秒の瞬断」が致命傷となり、音声の途切れや回線落ちを引き起こします。
③ ルーターと端末(クライアント)の主権争い
Wi-Fiの通信規格(IEEE 802.11k/v/rなど)において、どのアクセスポイントや帯域に接続するかを最終決定する権利は端末側にあります。ルーター側が「5GHzへ行け」と強制的に接続を切断するステアリング信号を送っても、端末側が「自分は2.4GHzを維持したい」と頑なに拒否した場合、接続プロトコルが衝突し、数秒間にわたって完全にオフライン化する不整合が生じるのです。