物語のクライマックス、「私」の鋭い論理的推論によって、隠蔽されていたすべての真相が暴かれます。結論から言うと、沙也加の正体は御厨佑介ではなく、佑介の義理の妹である「美晴(みはる)」でした。
日記に書かれていた少年の虐待死は、まぎれもない事実でした。佑介は食事も与えられず監禁された末に衰弱死しており、家族はその事実を隠蔽するため、死体を庭に埋めて夜逃げ同然に館を捨て去っていたのです。
幼少期の沙也加(美晴)は、兄の佑介が助けを求めてドアを叩く音や、やがて息絶えていく過程を壁一枚隔てた隣の部屋で目撃していました。兄を救えなかった激しい罪悪感と底知れぬ恐怖がトラウマとなり、彼女の精神を守る防衛本能として「幼少期の記憶」が完全に封印されていたというのが、記憶喪失の正体でした。