「政界のゴッドマザー」という異名は、単なる比喩ではない。昭和の妖怪と恐れられた岸信介の背中を見て育ち、若き政治家・安倍晋太郎のもとへ嫁ぎ、やがて息子たちを政界の中枢へと送り出した。その足跡は、日本の戦後政治史そのものと言っていい。
権力の中心に身を置きながらも、彼女自身が表立って選挙に出馬することはなかった。しかし、地元・山口県の支持者との絆を誰よりも大切にし、選挙戦の過酷さを知り尽くしていた彼女の差配は、並の政治家を遥かに凌ぐ鋭さを持っていたとされる。私邸で繰り広げられた政治家たちとの交流や、家族の重大な決断に寄り添い続けた姿は、まさに名門・安倍家と岸家を裏から支える大黒柱そのものであった。