遭難事故の直後から、SNSや一部のネット掲示板、動画プラットフォーム上では様々な憶測や過激な陰謀論が飛び交いました。とりわけ「重大な船体欠陥を隠して航行させていた」「保険金目的の故意の沈没ではないか」といった真偽不明の情報が拡散し、乗組員の遺族や関係者を苦しめる事態へと発展しました。
当メディアが海難審判の全記録および船舶検査済証、定期中間検査のドック履歴を精査した結果、それらのネット上の憶測は根拠のないデマであることが証明されています。同船は事故の半年前にも法定定期検査をクリアしており、船底鋼板の板厚測定記録も基準値を維持していました。
誤解が生じた主な原因は、初期のニュース速報における「救難信号の遅れ」という断片的な報道にありました。遭難現場では、浸水の発見から電源喪失までが極めて短時間であったため、固定式遭難無線機の送信が間に合わず、自動浮揚型の非常用位置指示無線標識(EPIRB)の作動に依存せざるを得ませんでした。この工学的なタイムラグを「意図的な連絡の遅延」と短絡的に解釈した投稿が拡散したのが真相です。不確かな情報に惑わされず、公的機関による客観的な検証事実を見極める姿勢が不可欠です。