小児医療現場において、自家中毒は正式にはアセトン血性嘔吐症、あるいは周期的に発作を繰り返す場合は周期性嘔吐症(Cyclic Vomiting Syndrome: CVS)と診断されます。この症状が2歳から10歳前後の幼児・学童期に集中する背景には、成長期の子ども特有の代謝構造が関係しています。
大人は肝臓や筋肉に十分なグリコーゲン(糖分)を蓄えることができますが、幼児期の肝臓は容積が小さく、エネルギーの備蓄タンクが極めて浅い状態にあります。ここで発熱、長時間の絶食、あるいは運動会や旅行前の緊張・興奮といった強烈な自家中毒 ストレスが加わると、体内の糖分はまたたく間に使い果たされてしまいます。
糖分が底をついた生体は、生命維持のために皮下脂肪を急激に分解して代替エネルギーを作ろうと試みます。この脂肪燃焼の過程で副産物として肝臓で大量生成されるのがケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン)です。血液中のケトン体濃度が危険域まで上昇する状態をケトーシスと呼び、酸性に傾いた血液とケトン体そのものが、脳の第4脳室底にある嘔吐中枢(CTZ)を強力に刺激します。その結果として引き起こされるのが、激しいケトン体 嘔吐の連鎖です。
多くの保護者が混同しやすい疾患が、ノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎です。しかし、臨床現場における自家中毒 胃腸炎 違いの判別ポイントは極めて明快です。ウイルス性胃腸炎では水様性の激しい下痢や38度以上の発熱が高確率で併発し、周囲の家族へ二次感染を起こします。対して自家中毒では、発熱は微熱程度にとどまり、下痢を伴うことは極めて稀です。さらに、患者の呼気から除光液や腐ったリンゴに例えられる甘酸っぱい「アセトン臭」が漂う点が、決定的な識別指標となります。