街のアイデンティティを語る上で欠かせないのが、東山区今熊野の歴史と由来です。平安末期、熊野信仰に深く帰依していた後白河上皇が、紀州熊野権現をこの地に勧請したことが「いまくまの(京の今熊野)」の始まりと伝えられています。
その中心を担う新熊野神社のご利益は、古くから健康長寿や病気平癒、とりわけ「頭痛封じ」として全国的に知られています。境内には後白河上皇のお手植えと伝わる樹齢約800年の大楠(京都市指定天然記念物)が堂々と根を張り、訪れる人々に圧倒的な生命力を与えています。
さらに奥まった山裾に佇む今熊野観音寺の見どころは、西国三十三所第15番札所としての風格と、四季折々に表情を変える豊かな自然です。特に今熊野観音寺の紅葉の見頃を迎える11月中旬から12月上旬にかけては、朱塗りの「鳥居橋」を鮮やかな紅葉が包み込み、まるで絵画のような絶景が広がります。境内奥の医王水や大師堂へと続く参道は、清水寺周辺のような大混雑を避けつつ古都の秋を堪能できる屈指の名スポットです。
ここを訪れるなら、皇室の菩提寺として名高い「泉涌寺」から今熊野観音寺を巡る散策ルートが外せません。総門から続く石畳の道を歩き、御寺(みてら)泉涌寺の荘厳な伽藍を拝観したあと、緑深い小径を通って今熊野観音寺へと抜ける散策コースは、歴史ファンのみならず心身のリフレッシュを求める現代人にとって最高の癒やしルートとなっています。