ハチ公の存在が広く知られるきっかけとなったのは、1932年(昭和7年)に日本犬保存会の創設者・斎藤弘吉が東京朝日新聞へ寄稿した「いとしや老犬物語」という記事でした。虐待や野良犬扱いを受けていたハチの境遇を嘆き、その一途な姿を世に知らしめたことで、日本中に「ハチ公ブーム」が巻き起こりました。
この日本国内での熱狂は、21世紀に入り国境を越えてグローバルな現象へと昇華します。1987年の日本映画『ハチ公物語』を原案として、2009年に公開されたハリウッド映画『HACHI 約束の犬』(リチャード・ギア主演)は、全米およびヨーロッパ、アジア各国で大ヒットを記録しました。
海外の映画レビューサイトや旅行コミュニティでは、ハチ公の行動に対して「無償の愛(Unconditional Love)」「忠誠心の究極形」として極めて高い評価が寄せられています。欧米の個人主義社会においても、「見返りを求めずにひとつの絆を守り抜く姿」は普遍的な道徳的感動を呼び起こしました。その結果、渋谷のハチ公像は外国人観光客にとって「東京を訪れたら必ず立ち寄るべき聖地」としてのステータスを確立したのです。