仕上がりの美しさと味わいを左右するのが、丁寧な下処理です。一尾丸ごと調理する場合でも、基本のステップを忠実に守ることで魚特有の生臭さを完全に断ち切ることができます。
まず最初に行うのが「ぜいご」の処理です。ぜいごとは、アジの尾から体側の中央にかけて並んでいる硬いトゲ状のウロコのこと。尾の付け根に包丁の刃を寝かせて当て、小刻みに刃を上下に動かしながら頭の方向へ向かって薄く削ぎ落とします。左右両面とも同様に削ぎ取ったら、包丁の背を使って体表全体の細かなウロコも優しくこそげ落とします。
続いてエラと内臓の処理に移ります。エラぶたを持ち上げてエラをつまみ出し、腹側に浅く切り込みを入れて内臓を掻き出します。ここで最も重要なのが、背骨の近くにある赤黒い「血合い」を爪楊枝や流水できれいに洗い流すことです。生臭さの主原因はこの血合いと内臓の残りカスにあるため、冷水で徹底的に洗い流します。
水洗いが終わったら、キッチンペーパーで表面とお腹の内側の水分を完全に拭き取ります。ここで酒を少量(大さじ1程度)全体に振りかけてから拭き取ると、アルコールの揮発効果によって揮発性の臭み成分(トリメチルアミン)が綺麗に飛び、身が格段に清らかな味わいになります。
最後に、火通りを均等にし、皮の破裂を防ぐために「飾り包丁」を入れます。身の最も厚い部分に、十文字または斜めに深さ5ミリほどの切り込みを入れておくことで、中まで均一に火が通り、盛り付けた際の見た目も美しく仕上がります。