作者の死後も連載が止まらない最大の理由は、さいとう氏が1960年代に立ち上げた制作集団「さいとう・プロダクション」の分業体制にあります。
かつて漫画制作は「1人の作家が机に向かってすべてを描き上げるもの」という神話が根強くありました。これに対してさいとう氏は、映画制作や工業生産の考え方をいち早くコミック界に持ち込み、制作工程を完全にシステム化したのです。
さいとう・プロダクションでは、以下のような高度なチーム編成が組まれています。
- 脚本部門(外部ブレイン・脚本家):元外交官、ジャーナリスト、気鋭のライター陣が国際情勢や最新軍事技術のプロットを構築。
- ネーム・構成部門:集まったシナリオを漫画の設計図へと落とし込み、画面構成を決定。
- 人物・作画部門:キャラクターのポーズや表情を担当する専属アニメーター級のアシスタント。
- 背景・銃器部門:精密なミリタリー考証に基づき、銃器や建造物を徹底的にリアルに描写。
さいとう氏が生前担っていたのは、全体の総指揮と最終的な表情・視線のチェック、そして作品の方向性を定める「映画監督」の役割でした。システム自体が作家の頭脳と技術を再現できるように設計されていたからこそ、氏が不在となった現在も、一切の違和感なくクオリティの高い劇画が生み出され続けています。