この痛快な快挙に対し、インターネット上の掲示板やSNSでは時折「たまたま運が良かっただけではないか」「放っておいたら勝手に産卵しただけ」という冷ややかな見解が散見されます。しかし、当時のカブトガニ人工孵化の経緯と現場の克明な記録を検証すれば、そうした憶測が完全な誤りであることは明白です。
カブトガニの受精卵は、適切な酸素供給と適度な水流、砂の粒度、微生物の繁殖を抑える清潔な環境が揃っていなければ、数日から数週間で白濁してカビに覆われ死滅します。散歩によって産卵が誘発されたとしても、その後の卵を丹念に世話し、孵化まで生存させることは並大抵の技術ではありません。
さかなクンは当時、卵を傷つけないようスポイトで一粒ずつ選別し、腐敗卵をピンセットで丁寧に取り除くなど、徹夜同然で水質をコントロールし続けました。誰に教わったわけでもなく、生物が生き生きと動く条件を自らの五感で把握していたのです。この飽くなき執念と緻密な手作業の積み重ねを無視して「偶然の産物」と片付けることは、科学的・実証的な観察精神に対する冒涜と言えます。