当時の視聴者にとって、セシールのCMは単なる通販の宣伝にとどまらない、特別な空気感を持った映像でした。SNSや回顧録などで語られる当時のリアルな視聴体験を紐解くと、共通する当時の世相が浮かび上がってきます。
「ゴールデンタイムの家族団らんでテレビを見ている時に、セシールのインナーや下着のCMが流れると、なんとなく気まずい沈黙が流れた。その気まずさをかき消すように最後の『しのぶちゃん』という空耳で家族で笑い合った」という体験談は、当時の20代から40代の視聴者から非常によく聞かれます。
また、フジテレビ系『タモリのボキャブラ天国』や各種バラエティ番組でも「空耳」の代表格として取り上げられたことで、視聴者の間で「公式な謎解き」を楽しむカルチャーが醸成されました。インターネットが普及する以前の時代において、学校の教室や職場の雑談で「あれ、本当は何て言ってるか知ってる?」と話題にすることが、一種の知的コミュニケーションとして機能していたのです。