成蹊大学在学中、片桐はいりは演劇界の巨匠・太田省吾が率いる「劇団木冬社」の門を叩いた。言葉を削ぎ落とし、極限の身体言語で空間を支配するアングラな舞台演劇の現場。そこで培われた研ぎ澄まされた間合いと身体のコントロール能力が、のちの唯一無二の怪演を支える強固な土台となる。
下積み時代の彼女を語る上で欠かせないのが、銀座の映画館(旧・銀座文化劇場、のちのシネスイッチ銀座)での「もぎり」アルバイトだ。チケットをもぎりながら、暗がりから名画を何百本と見つめ続けた日々。銀幕に映る世界の一流俳優たちの息遣い、観客のリアルな反応を肌で吸収した名画座のフロアこそが、彼女にとって最高の演劇学校だったに違いない。