英語イディオム「preaching to the choir(プリーチング・トゥ・ザ・クワイア)」の根底にあるコアイメージは、「すでに自分と同じ考えを持ち、完全に納得している相手に対して、わざわざ同じ意見を熱弁・説得している状態」です。
教会の日曜礼拝において、牧師が壇上から「神を信じなさい」「信仰を守りなさい」と説教をするとき、祭壇の脇に控えている「聖歌隊(the choir)」は、そもそも誰よりも熱心に教会に通い、信仰心にあふれているメンバーで構成されています。彼らに向かって「信じることの尊さ」を一から説く行為は、まさに「すでに信じ切っている人への無意味な力説」にほかなりません。
この宗教的シチュエーションが転じ、現代英語では以下の2つの主要なシチュエーションで定着しています。
1つ目は、「相手の意見に100%同意しており、それ以上説得される必要がないとき」の返し技です。「You are preaching to the choir.(言われなくても完全に同意見だよ/百も承知だよ)」というフランクな共感フレーズとして機能します。
2つ目は、「すでに賛同している内輪にばかりアピールして、本来説得すべき外部層に届いていない非効率な行動」を客観的に批判・指摘する文脈です。マーケティングや政治戦略の議論において頻出する分析的フレーズとなっています。