インターネット上の掲示板やSNSで現在も定期的に再燃するのが、「昔、自衛官の子どもが学校の授業で教員から人格否定をされた」「自衛隊員の親を持つ生徒が立たされて『お前の親は人殺しだ』と罵られた」という極めてショッキングな言説です。この都市伝説とも受け取れる過激なエピソードの背景には、一体どのような事実が存在するのでしょうか。
歴史公文書や当時の国会議事録を丹念に紐解くと、この言説は完全な創作ではなく、昭和40年代から50年代にかけて散発した「一部の過激な組合員教員による不適切指導」が原体験として存在したことが判明しています。
例えば、1970年代の国会(参議院文教委員会や内閣委員会)において、自衛隊基地を抱える自治体の学校で、教員が自衛官の生徒に対して「お父さんの仕事は憲法違反」「税金泥棒」といった趣旨の発言を行った事案が取り上げられ、当時の政府・文部省が「公教育の中立性を逸脱した極めて遺憾な行為」として調査と指導を答弁した記録が残されています。
また、自衛隊員の手記や家族の手記にも、授業参観で親の職業を聞かれた際に屈辱的な思いをした体験や、校内での作文指導で自衛隊を批判するよう強要されたとする記述が少なからず見られます。つまり、日教組という組織全体が一律に「自衛官の子どもを差別せよ」という指示を出していた事実はないものの、組合運動が先鋭化していた地域や過激派の影響を受けた個別の学校現場において、子どもを思想闘争に巻き込む不適切な言動が実際に発生していたことは否定できない歴史的事実です。
これが平成から令和にかけてネット上で反芻される過程で、個別具体的な事例が「学校現場全体で行われていた普遍的な慣習」であるかのように拡大解釈され、強烈な記憶として固定化していったというのが真相です。