レストランの軒先で食欲をそそる立体メニューとして、日本独自の発展を遂げてきた食品サンプル。その産業の原点は、郡上八幡出身の実業家・岩崎瀧三(いわさき たきぞう)のひらめきと情熱にあります。
1895年に郡上八幡で生まれた岩崎瀧三は、貧しい暮らしの中で上京・大阪へと渡り、試行錯誤を重ねていました。ある夜、灯していたロウソクの蝋が水たまりに落ち、まるで白い花のように固まる様子を見たことから着想を得て、サンプルの事業化を決意します。1932年、彼が完成させた第1号の実用モデル「オムレツ」は、本物の料理と見分けがつかないほどの完成度で、外食産業に一大革命をもたらしました。
その後、岩崎は故郷である郡上八幡の地域振興と雇用創出のため、製造拠点をこの地へと移転・集約させました。手先の器用な地元の職人たちが育成された結果、町全体が巨大な生産ファクトリーへと発展。現在でも全国シェアの過半数を郡上八幡周辺の企業が占めていることが、「食品サンプルの聖地」と呼ばれる最大の理由です。