現住建造物等放火罪はなぜ死刑もあるのか?非現住との差や量刑を解説

現住建造物等放火罪はなぜ死刑もあるのか?非現住との差や量刑を解説

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刑事弁護の現場において、現住建造物等放火罪は「最も執行猶予を取りにくい犯罪類型」の一つとして知られています。その理由は、法律が定める刑期の足切りラインにあります。

刑法25条の規定により、裁判官が執行猶予を言い渡すことができるのは「3年以下の拘禁刑・禁錮または50万円以下の罰金」を言い渡す場合に限定されています。しかし、刑法108条の法定下限は「5年」です。裁判官が被告人の反省や情状を最大限に汲み取り、「酌量減軽(刑法66条)」を適用して刑期を半分に減らしたとしても、下限は2年6月となります。つまり、法律上可能なギリギリの減刑を勝ち取った上で、さらに裁判官を説得して執行猶予を付してもらうという、針の穴を通すような司法手続きが必要となるのです。

法務省の犯罪白書や裁判統計を見ても、現住建造物等放火罪で起訴された被告人のうち、執行猶予が認められる割合はおよそ1割から2割未満にとどまります。前科のない初犯であっても、以下のような事情が揃わなければ刑務所への収監は避けられません。

  • 放火の態様がごく初期の段階で消し止められ、物的損害が軽微(未遂あるいは畳・障子の一部分の燻り程度)であること。
  • 住人や近隣住民に対する避難誘導や、自ら通報・消火活動を行うなど「中止未遂」に近い反省行動が存在すること。
  • 被害者や家主、近隣住民に対して被害弁済を完了し、示談または宥恕(処罰を望まない意思表示)が得られていること。
  • 被告人に重度の精神疾患や心神耗弱が認められ、責任能力の減退が医学的・司法的に立証されること。

地方都市で発生した実際の事例として、熊本県阿蘇市で14歳の男子中学生が宿泊施設に火をつけて燃やそうとした現住建造物等放火未遂容疑で逮捕された事件などが報道されています。宿泊施設や大型複合施設、深夜のアパートへの放火は、宿泊客や住民がパニックに陥り逃げ場を失う危険が極めて高いため、たとえ未遂や若年層の犯行であっても警察・検察は徹底した強制捜査と厳格な身柄拘束を実施します。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。