雲の上の図書館の扉を開けると、まず目を奪われるのが頭上に広がる木造の幾何学模様です。地元である梼原町産のスギ材を幾重にも組み上げた天井の格子は、大地から伸びる木々の枝葉が重なり合い、上空から柔らかな光が差し込む「木漏れ日の森」を具現化しています。
この独創的な建築が生まれた背景には、梼原町と隈研吾氏との30年以上にわたる深い絆が存在します。1980年代後半、梼原町に残されていた大正時代の木造芝居小屋「ゆすはら座」の保存運動を契機に、隈氏は初めてこの地を訪れました。当時のインタビューで隈氏は「木という素材の強さと温もり、そして職人の伝統技術の奥深さを梼原で再発見した」と振り返っています。この出会いこそが、その後の新国立競技場設計などへとつながる「和の大家」としての転換点となりました。
館内は土足厳禁となっており、靴を脱いで素足や靴下で過ごすスタイルが導入されています。スギの浮造り(うづくり)フローリングの心地よい感触が足裏から直接伝わり、訪れた人々は自然とリラックスした心理状態へと導かれます。視覚的な美しさだけでなく、肌触りや香り、静謐な音環境まで計算し尽くされた空間設計こそが、多くの人々を魅了する本質です。