身長が伸びるという現象の根本には、骨の両端に存在する軟骨組織である骨端線(こったんせん)の活動があります。小児期から思春期にかけて、骨端線内の軟骨細胞が活発に増殖し、それが石灰化して硬い骨組織へと置き換わることで、長骨(大腿骨やすねの骨)が長軸方向に成長します。この生体プロセスが稼働している間であれば、1年間で7〜10センチ以上の急激な伸びを示す「成長スパート」を経験することは決して珍しくありません。
問題は、この骨端線がいつまで開いているかという点です。一般的に男性は17歳〜18歳前後、女性は15歳〜16歳前後で性ホルモンの働きによって骨端線が完全に骨化(閉鎖)します。日本整形外科学会の知見でも示されている通り、一度閉鎖した骨端線が再び開いて自然に骨が伸びることは医学的にあり得ません。したがって、「骨端線が閉じた大人でも骨自体が自然に10センチ伸びる」という言説は、解剖学的に完全な虚偽です。
ただし、希望がゼロというわけではありません。成人において「身長が伸びた」と実感できるケースの9割以上は、骨が長くなったのではなく、日頃の悪姿勢や重力によって押し縮められていた脊椎(背骨)の生理的湾曲や椎間板の厚みが正常な位置へと復元された結果です。この生体力学的なアプローチであれば、大人であっても1〜3センチ程度の測定値向上は現実的に起こり得ます。