手足口病には、急性期の症状が治まった後に訪れる見落とされがちな「第2の波」が存在します。それが、感染から数週間から1〜2ヶ月ほど経過した頃に発生する手足口病の爪が剥がれる症状(爪甲脱落症・ボー線条)です。
「子どもの足や手の爪が根元から浮き上がり、ペリペリと剥がれてきた」と皮膚科に駆け込む親が後を絶ちませんが、この現象の決定的な原因はコクサッキーウイルスA6(CA6)にあります。ウイルスが爪の根元にある「爪母(爪を作る組織)」に一時的な強い炎症を引き起こし、爪の成長を数日間にわたって停止させてしまいます。その後、健康な爪の製造が再開されると、成長が止まっていた薄い部分に亀裂が入り、古い爪が押し出されるように剥がれ落ちるのです。痛みや出血を伴うことは稀で、下から新しい爪が生えていれば特段の投薬治療は不要ですが、予備知識がない保護者にとっては強い恐怖体験となります。
さらに深刻なのが、子どもから看病中の親へうつる手足口病の大人の症状です。「子どもの病気」と侮って感染した成人は、小児とは比較にならない激甚な苦痛を味わうことになります。
- 歩行不能に陥る足底の激痛:足の裏に無数の硬い水疱が形成され、全体重がかかるため一歩も歩けなくなる。
- 重篤な全身倦怠感と高熱:39〜40度の高熱とインフルエンザ以上の関節痛・悪寒が数日間継続する。
- 飲食を阻む口腔内の広範な潰瘍:喉の奥だけでなく舌全体や歯茎まで口内炎が密集し、唾液を飲み込むことすら激痛を伴う。
大人の感染は免疫機構の激しい防御反応によって引き起こされるため、社会生活が完全に破綻するほどのダメージを受けます。「大人はかからない」という言説は完全な誤信です。