大間マグロのドラマは、海の上だけで完結しない。極寒の海で釣り上げられた黒いダイヤが向かう先、それが年明けの豊洲市場で行われる名物「初競り」だ。鐘の音とともに卸売場に熱気が満ち、威勢のいい競り人の声が響き渡る。その中心で幾度となく主役を演じてきたのが、寿司チェーン「すしざんまい」を展開する株式会社喜代村の木村清社長である。
2019年の初競りで記録された、大間産クロマグロ(278キロ)の史上最高値「3億3360万円」。1キロあたり120万円という空前絶後の落札額は、国内外のメディアでトップニュースとして報じられた。なぜそこまでの巨額を投じるのか。木村社長は「日本を元気にしたい、お客様に一番美味しくて縁起の良いマグロを食べてほしい」と語る。漁師の命がけの労働に対する敬意と、初春の縁起物を巡る商人の心意気がぶつかり合う競り場は、冬の風物詩としての熱狂をさらに加速させている。