肥前町観光スポットの最高峰として全国に知られるのが、「肥前町いろは島」です。伊万里湾に浮かぶ大小数十の無人島群は、エメラルドグリーンの穏やかな海面と濃緑の松林が織りなす一大パノラマを展開しています。平安時代初期、唐へ渡る前の弘法大師(空海)がこの地を通りかかった際、あまりの多島美に見とれ、その神髄を描ききることができずに筆を投げ置いたという「筆投げ伝説」が残されているほどです。
高台に整備された展望広場や国民宿舎の露天風呂から眺める夕景は、日中の爽快感とは一変し、息をのむ静寂と神秘的な色彩に包まれます。2026年現在も、人工的な過剰開発を免れた自然海岸の陰影が残されており、慌ただしい日常から離れて心を整えたいと願う都市住民にとって、屈指のリトリート空間として機能しています。
もうひとつの至宝が、日本の棚田百選に選定されている「肥前町大浦の棚田」です。玄界灘を望む急傾斜地に、幾重もの美しい石積みが重なり合う景観は、先人たちが何世代にもわたり過酷な自然を開拓してきた結晶そのものです。特に田植え前の5月上旬から中旬にかけて、水が張られた無数の田んぼに夕陽が反射して茜色に染まる光景は圧巻の一言であり、国内外の写真愛好家が息を潜めてシャッターを切る瞬間です。肥前町の歴史と文化が自然と調和した最高傑作といえます。