ネット掲示板やSNSで財産区が話題にのぼる際、必ずと言ってよいほど注目されるのが財産区の温泉利権や財産区所有の山林売却に伴う莫大な利益の行方です。「区民になると毎年数十万円の臨時収入がある」「温泉にタダで入り放題らしい」といった噂は、果たしてどこまでが真実なのでしょうか。
実際のところ、一部の有名温泉街や大都市近郊において、莫大な資産価値を持つ財産区が存在することは紛れもない事実です。例えば、兵庫県神戸市内の有馬温泉周辺や、長野県、群馬県の山間部などに点在する財産区では、源泉の湧出権や配湯事業を財産区が握り、旅館や一般家庭へ供給することで年間数億円規模の安定した使用料収入を得ている事例が報告されています。また、近年の再生可能エネルギーブームに伴い、広大な休眠山林を大手電力系企業にメガソーラー用地や風力発電用地として売却・賃貸し、数十億円単位の契約金が財産区の特別会計に払い込まれたケースも報道されています。
では、その富は住民へ現金として還元されているのでしょうか。財産区の配当金と分配を巡る法制度は極めて厳格です。地方自治法の枠組みにおいて、財産区の収益は原則として「区域住民の共通の福祉増進」に充てることが定められており、私企業のように現金をそのまま分配する行為は行政監査の対象となります。多くの地域では、直接的な現金給付ではなく、以下のような形で区民へ還元されています。
- 水道料金や温泉引き湯料金の大幅な減免(一般住民の数分の一の負担)
- 区民専用の共同浴場、集会場、コミュニティ施設の無料利用
- 財産区立の幼稚園・保育施設の補助金や、区民の子弟に対する独自の返済不要奨学金
- 区域内の道路補修、農道整備、防災設備の完全無償メンテナンス
ただし、ごく一部の地域では歴史的な入会権(民法第263条・第294条)の慣習に基づき、「管理作業への出役報償費」や「権利金の一部払い戻し」という名目で、年間数万円から十数万円程度の現金が実質的な配当として世帯主に交付されている事例も存在します。これが外部から見た際に「秘密の配当金」として誇張され、噂の温床となっているのが実情です。