この店の代名詞といえば、なんといっても圧巻の「パエリア」だ。厨房の中央で異彩を放つのは、一度に数十人前を炊き上げることができる特注の巨大パエリア鍋。薪や炭の火力を見極めながら、魚介の濃厚な出汁を米一粒一粒の芯までじっくりと染み込ませていくプロセスは、まさに職人技の極致と言える。
運ばれてくる熱々のパエリアからは、サフランの豊かな香りとエビや貝類の旨味が凝縮された香ばしい湯気が立ち上る。米の表面はふっくらと仕上がりつつ、鍋底には絶妙な塩梅のおこげ(ソカラ)がこびりついている。一口含めば、海鮮の濃厚なエキスが口いっぱいに広がり、本場バレンシアの風が吹き抜けるかのような錯覚を覚えるはずだ。