白正男氏を巡って最も激しい議論が交わされてきたのが「作者の国籍はどこなのか」という問題です。作中では「テコンドーこそ世界最強」「日本文化の起源はすべて朝鮮半島」といった、いわゆるネット右翼が揶揄するステレオタイプな言説が極端にデフォルメされて描かれます。
このアクロバティックな作風ゆえに、読者層からは以下のような対立する2つの誤解が生じがちです。
- 誤解1:「作者は極左・反日の在日コリアンであり、日本を侮辱するために描いている」
- 誤解2:「作者は悪意を持った極右の差別主義者であり、ヘイトスピーチを目的にしている」
しかし、テキスト構造を精緻に読み解く文芸批評やメディア論の観点から見れば、その実態は「あらゆる政治的イデオロギーを等しく茶化すシニカルなポストモダン風刺」です。作中では韓国側のナショナリズムだけでなく、日本の政治家や右派言論人、さらには覇権主義的な大国までもが徹底的にパロディ化されています。
日本のネットスラング、古典的なギャグ漫画の文法、そして2ちゃんねる(現5ちゃんねる)発祥のミームに対する異常なまでの解像度の高さから、「日本のサブカルチャー界隈で長年活動してきた日本国籍のライター・編集経験者」である可能性が極めて濃厚と見られています。「白正男」という名義自体が、作品の「人権派格闘技漫画」というギミックを補強するための舞台装置なのです。