打席に立つプロの強打者たちが、ワンバウンドしそうなボールに思わずハーフスイングを取らされ、あるいはストライクゾーンから突然視界から消えたかのように見逃し三振に倒れる――。佐々木朗希のフォークボールが打てない最大の理由は、投球軌道を同一に見せる「ピッチトンネル」の長さと、常識を覆す高速落差のギャップにあります。
人間の打者が投手のリリースからボールの球種やコースを判断できるのは、ホームプレートまでの約18.44mのうち、最初の数メートル(時間にして約0.15秒以内)に限られます。佐々木朗希の投球フォームは、最速165km/hを記録するストレートとフォークボールで、リリースの腕の角度・腕の振り・初速の初動ベクトルが完全に一致しています。打者の脳は「高めのストレート」と認識してスイングを始動しますが、ベース板の手前約5〜6mに差し掛かった瞬間、重力と空気抵抗によってボールが真下へ鋭くダイブします。
一般的なスプリットが135km/h前後であるのに対し、佐々木朗希のフォークは常時140km/h台中盤から後半に達します。打者にとっては「豪速球のタイミングで振り出したバットの遥か下を、剛速球のスピードを保ったまま通過していく」感覚に陥るため、軌道を見極めてからバットを止めることは生理学的に不可能です。