リハビリ室の平坦なリノリウム床から一歩外へ出た瞬間、患者とその家族は厳しい現実に直面します。大手Q&Aサイトや当事者コミュニティ、回復期リハビリ病棟の退院者アンケートを丹念に調査すると、装具ユーザーが抱える切実な実態が浮き彫りになります。
「退院が決まって一番ショックだったのは、お気に入りの靴がすべて履けなくなったことでした」
そう語る50代の脳卒中サバイバーの女性は、発症前のスニーカーやパンプスを何足も処分せざるを得なかった辛さを手記に綴っています。短下肢装具を足に装着すると、足回りの周径が1〜2サイズ大きくなるため、左右で同じ靴を履くことが極めて困難になります。市販のリハビリ用介護シューズ(片足ずつサイズを変えて購入できるタイプ)を選ぶケースが多いものの、「いかにも病人というデザインで外を歩くのが恥ずかしい」と外出をためらい、活動範囲が狭まってしまうケースが後を絶ちません。
また、装具への心理的抵抗感も大きな壁です。発症初期の患者ほど「装具をつけると、もう二度と自分の力だけで歩けなくなるのではないか」という不安に苛まれます。しかし、無理に装具を外して歩こうとすると、代償動作(麻痺した足を外側から大きく振り回す「ぶん回し歩行」)が身体に染み付き、かえって麻痺の回復を阻害する結果に終わります。当事者コミュニティでは、「装具は一生依存する足枷ではなく、正しい歩き方を身体に思い出させるためのトレーニングマシンだと割り切れるようになってから、歩行距離が一気に伸びた」という声が多く見られます。装具の受け入れは、単なる肉体的な適応だけでなく、深い心理的受容のプロセスを伴うのです。