室内のダニとは全くの別物として警戒しなければならないのが、山林、草むら、河川敷、あるいは身近な公園の植え込みに生息するマダニです。春から秋にかけて活動が活発になりますが、冬場でも注意を怠ることはできません。
マダニは体長数ミリですが、人の皮膚にしっかりと口器を突き刺すと、セメント状の物質を分泌して数日間〜10日以上吸血し続けます。吸血中のマダニは血液を吸って1cm以上の黒豆のようなサイズに膨張するため、「皮膚に黒いイボやカサブタが急にできた」と気づくケースが少なくありません。噛まれた瞬間は痛覚を麻痺させる成分を含む唾液のため痛みがなく、自覚症状がないまま吸血が継続します。
マダニ被害で最も警戒すべきは、ウイルス性感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱、ライム病の媒介です。SFTSを発症すると、潜伏期間(6日〜2週間)を経て発熱、消化器症状(嘔気・嘔吐・下痢)、倦怠感などが現れ、致死率は10〜30%と極めて高水準です。
マダニが皮膚に食いついているのを発見した場合、絶対に手やピンセットで無理やり引き抜いてはいけません。無理に引っ張るとマダニの頭部や口器が皮膚内に千切れて残り、化膿や肉芽腫の原因になるほか、虫体を圧迫して病原体を体内に逆流させる危険があります。発見した際はそのまま触らず、速やかに皮膚科や外科を受診して切除処置を受ける必要があります。