近年、SNSや美容系コミュニティを中心に話題を集めているのが「経血コントロール」という概念です。「昔の日本の女性は布ナプキンすら使わず、トイレで一気に経血を排出していた」という言説とともに、トイレで経血を排出するコツを伝授するコンテンツが注目を集めています。実際に知恵袋やX(旧Twitter)では、「トイレに行くたびに前傾姿勢で下腹部に圧をかけたら、いつも6日かかる生理が4日で終わった気がする」「骨盤底筋を意識して締める練習をしたらナプキンを汚さなくなった」という体験談が数多く投稿されています。
しかし、解剖学的に検証すると、この経血コントロールの真相には大きな誤解が含まれています。子宮頸管は非常に細い管であり、子宮平滑筋の不随意な収縮によって経血を少しずつ腟内へと押し出します。腟自体も普段は閉じた筋肉の空洞であるため、内部に多少の血液がプールされる構造になっています。つまり、トイレでいきんで排出されているのは「すでに腟内に溜まっていた経血」であって、子宮から新たに剥がれ落ちる血液のスピードを操作できているわけではありません。
骨盤底筋群を鍛えるトレーニングや、生理期間を短縮する運動とストレッチとして紹介されるヨガのポーズ(合席のポーズや猫のポーズなど)は、骨盤底筋の柔軟性を高め、血行不全による鬱血を緩和する意義は十分にあります。しかし、無理に強くいきみすぎると骨盤底筋群に過度な負担がかかり、将来的な子宮脱や尿漏れのリスクを高める要因にもなり得ます。「生理を早く出し切る方法」として過信し、強引な腹圧をかけ続ける行為には注意が必要です。