インクの染み抜きにおいて、最もやってはならない致命的な過ちは「何のインクか分からないまま作業を始めること」です。インクの主成分は、大きく分けて色素(染料または顔料)、溶剤、樹脂で構成されています。この溶剤が油分をベースにしているのか、水分をベースにしているのかによって、有効なアプローチは正反対になります。
油性ボールペンは、油溶性の溶剤に染料や樹脂を溶かし込んでいるため、耐水性が極めて高く、水や石鹸水だけではびくともしません。一方の水性ボールペンは、水に溶ける性質を持つため、水分と界面活性剤を与えることで比較的スムーズに溶け出してきます。そして現代の文具市場で最も普及しているゲルインク(エマルジョンインク含む)は、水性の書き味と油性の耐水性を兼ね備えたハイブリッドであり、耐光性・耐水性に優れた「顔料」がミクロの粒子として繊維の隙間に物理的に入り込むため、家庭での処理難易度が最も高い部類に属します。
自身が使ったペンの銘柄が分からない場合は、以下の比較表を参考に衣類の汚れの状態を冷静に観察し、適切な手順を選択してください。
見分け方の実践的なテクニックとして、シミの端にティッシュペーパーを水で少し湿らせて軽く押し当てる方法があります。ティッシュにインクがじわりと滲み移るなら水性、まったく色が動かない場合は油性の可能性が極めて濃厚です。また、パイロットの「フリクション」シリーズのような摩擦熱消去タイプであれば、洗剤を使う必要すらなく、ドライヤーで温風を当てるだけで瞬時に無色化します。