沢尻エリカのビジュアルヒストリーを振り返る上で、最大の転換点となったのが口元の変化です。デビュー初期から『パッチギ!』(2005年)前後に見せていた彼女の笑顔には、左上犬歯が前方に飛び出したいわゆる「八重歯」が存在していました。日本では古くから八重歯が「あどけなさ」や「愛嬌」の象徴として好まれる傾向が強く、彼女の小悪魔的な可愛らしさを引き立てる決定的なチャームポイントとして認知されていたのです。
しかし、2010年前後の海外拠点活動やコスメブランドの大型CM出演期を境に、その八重歯は完全に姿を消しました。同時に、現在多くの読者が指摘する「沢尻エリカの歯が長い」という視覚的印象が顕在化し始めます。この現象の背景には、歯そのものの物理的な長さだけでなく、人間の視覚認知における「縦横の対比錯視」が深く関係しています。
八重歯が存在していた頃は、歯列に立体的な高低差と前後差があり、笑った際に視線が外側のアクセント(犬歯)へと分散されていました。ところが、歯列を一直線のアーチ状に整え、なおかつ前歯2本(中切歯)から奥へと均一な長さを揃えたことで、平面的かつ垂直方向のラインが強調されるようになったのです。さらに、後述する歯肉ラインの引き上げによって歯冠自体の露出面積が縦に広がったことが、「歯が以前より長く伸びた」ように錯覚させる決定打となりました。