楽曲の幕開けを飾る《一つだけ願いが叶うとしたならば 「いくつでも叶いますように」…》という印象的なフレーズ。歌ネットやうたてんなどの歌詞プラットフォームでも長年引用され続けるこの一節は、童話的なロマンティシズムを冒頭から鮮やかに打ち砕きます。
一般的なおとぎ話であれば「世界平和」や「大切な人の幸せ」といった美徳が語られる場面で、語り手は自らを「僕はそういう人です」と臆面もなく告白します。この冷徹なまでの自己客観視こそが、本作を単なるラブソングから一線を画す傑作へと昇華させている根源です。
タイトルに冠された「グレーテル」の元ネタがグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』であることは明白ですが、兄であるはずの「ヘンゼル」が消え、代わりに「メルヘン(虚構・おとぎ話)」が据えられている点に最大の伏線が存在します。残酷な現実の森に取り残された人間が、甘いお菓子の家のような嘘やエゴに sugar-coat(砂糖漬け)された世界でどう愛を叫ぶのか。メルヘンという名の虚飾と、生身の人間の醜悪な本音の対比が、聴く者の心を鋭く揺さぶります。