大相撲で力士が締めるまわしの紐の名前こそが「さがり」です。テレビ画面では単なる前垂れのように映りますが、相撲の歴史において欠かせない儀礼的意義を担っています。
相撲におけるさがりの意味と役割の根幹は、神道における「結界」にあります。相撲は本来、神前で五穀豊穣や国家安寧を祈念して行われてきた神事です。土俵の中央に神が宿るとされるのと同様に、土俵に上がる力士自身もまた神聖な依り代とみなされてきました。
歴史研究者や相撲史の記録によると、さがりの注連縄の由来は神社で見られる注連縄とそこに垂れ下がる「紙垂(しで)」に直結しています。江戸時代中期、力士は現在の化粧廻しに相当する豪華な前垂れを着けたまま取組を行っていました。しかし、動きやすさや格闘技としての実用性を追求する中で前垂れが簡略化され、神聖な注連縄の象徴として残されたのが現在のさがりです。力士の前立てに下げることで、不浄を払い、神聖な肉体を守る境界線としての役目を果たしています。